すぐに、退職・転職を考えてしまう「あなた」のためのカウンセリング!

心理カウンセリング/トラウマ治療(神奈川県横浜市)

IAP横浜相談室

【主な実施場所】(関内駅周辺の施設に変更になる場合があります)
〒231-0048 神奈川県横浜市中区蓬莱町2丁目4-7 澤田聖徳ビル 

予約制
関内駅・伊勢佐木長者町駅より徒歩3分

依存症家族のカウンセリング(相談)

依存症への家族対応
~みんなが笑顔になるCRAFTの活用~

IAP横浜相談室伊藤享司

依存症に対する家族の基本対応

①自分の責任は自分でとらせる。

②イネーブリングをやめる

その二つだけだと良く分からない!

  • 具体的にどのようにすれば上手くいくのか分からず、それだけだと苦しくなってしまう。
  • そこで、認知・行動療法に位置づけられる、CRAFTという手法を活用していくことが依存症家族に対応していくために有効だと思われる。

自分の責任は自分で取らせる。

 

  • 生きていて、向き合わないといけないものはたくさんある。
  • その一つ一つが苦しく辛いこと。
  • 目を背けることが出来れば楽である。
  • 「そーだ!依存対象に依存しよう!」
  • 依存症になると、本来向き合わなければいけないものから目を背けた生き方で生きることになる。
  • 依存症になってしまった人は、自分の人生を自分で歩む、責任を取る、ということが、回復にとって必要。
  • 家族対応のキーワードが「イネイブリング」

イネイブリングとは

 

  • 語源はenableで「可能にする」(動詞)
  • 可能にする人(名詞)が「enable(イネーブラー)」
  • イネーブラーの行動がenabling(イネイブリング)
  • 結果として、お酒を飲む(依存対象に依存する)ことを可能にする、許可することになる行動をイネイブリングと呼んでいる。
  • 家族は本人のためを思って行っている飲酒をさせないための働きかけ(例えば、説教や小言を言う、お酒を隠す、飲酒をしているときに喧嘩をするなど。)または、飲酒した結果の後始末(着替えや、粗相の片づけ、仕事を休むことになった時の職場への連絡等)、が知らないうちにイネイブリングになっていることがある。

イネイブリングは愛である

 

  • これまでの話だけでは、家族が依存症者の依存を促進している!家族が悪い!と心なしに思ってしまう人もいる。
  • しかし大切な人が、お酒を大量に飲む、違法薬物に手を出す、パチンコにはまっている、誰でもなんとかして辞めさせたいと思うのは、当然のことであり、人間としての愛情といえる。
  • 支援者も日々同じ課題が突き付けられている。どこまでやればクライエントを自立に導くことができるのか、やりすぎたら自立から遠ざかる(イネイブリング)。本人に任せすぎたら、一歩間違えれば支援の放棄。

社会(世間)からの排除を恐れているのも家族と支援者は一緒。

 

  • (家族)
  • 家族がずっと依存症のままだったら家族として失格、ダメ親、ダメ夫・妻(社会の価値観)。
  • 本人に任せることなんてできない!→イネイブリングへ
  • (支援者)
  • 社会からの要請に応えられない支援者なら支援者失格!クライエントになんかに任せられない!→イネイブリングへ
  • 支援者の枠組み(社会の価値観)をクライエントに押し付ける。「自分のせいじゃない、社会が悪い」と言い訳できる。
  • 依存症家族の対応を考えることで、日々の支援者の在り方を振り返る。

CRAFTとは

 

  • 認知行動療法に位置づけられる「コミュニティ強化と家族トレーニング(community Reinforcement and family Training)」。
  • 中心は「機能分析」
  • 依存症になった人と家族の行動(認知)を徹底的に機能分析する。
  • 飲酒や暴力等の引き金になっている状況・出来事・関わりをみつけ、それをさけるためにはどうするか計画をたてて実行する。
  • すぐには上手くいかないかもしれないが、振り返りを行い、次の計画を立てる。
  • しかし、一番大切なのは「安全」。必要であれば非難する、警察に助けを求めることも重要。

機能分析(行動アセスメント)

 

  • 行動科学の学習理論に基づく。
  • 特に3項随伴性を理解する。
  • 認知(その時にどのように考えていたか)も扱う。
  • 開発者によれば、認知行動療法・行動科学(学習理論)に精通していなくても、CRAFTのプログラムを学ぶことで家族と一緒に取り組み対応することが可能。
  • また、機能分析に基づき計画し実行する。
  • 実行する際のコミュニケーションも学ぶ。

先行刺激(きっかけ・引き金)を探る

 

  • 依存症者が依存行動をとるきっかけを今まで起きたことを振り返り、洗い出します。
  • 時間や、場所、何かイベントがあったか、どのようなシチュエーションだったか、本人の気分はどうだったか、家族の気分はどうだったか、何が起きていたかなど。
  • 具体的な出来事だけでなく、身体の生理的な反応や頭で考えていること(認知)も含みます。
  • 例1、上司に怒られた+気分が落ち込んだ→飲酒
  • 例2、週末の仕事が終わった+解放感を得た→飲酒
  • 例3、母親から「あなたはお酒を飲んでいたほうが元気だね」と言われた+元気を出そうと思った→飲酒
  • 例4、家族がイライラしていた+本人にきついものの言い方をした→飲酒

三項随伴性

 

  • 先行刺激→行動→結果この流れが3つセットで行われる。行動が結果に対してどのような機能を果たしていて繰り返されて(学習)いるか検討する。
  • 例えば、上司に怒られた(先行刺激)→居酒屋で4合日本酒を飲む(行動)→飲酒により嫌なことを忘れられる(結果1)+千鳥足で帰宅し翌日職場に遅刻(結果2)。結果2の「職場に遅刻する」より、結果1の「嫌なことを忘れられる」メリットが大きく感じられた(機能)ときに飲酒という行動が繰り返される
  • 家族視点だと、居酒屋で4合日本酒を飲んできた夫が帰ってきた(先行刺激)→「なぜそこまで飲むのか」と説教をする(行動)→飲酒やめさせたいという思いを吐き出せる(結果1)夫が自宅でも焼酎を開け飲み始める(結果2)。結果2の「本人が飲酒してしまう」ことより、「家族の気持ちを優先させる」ことの方がメリットがあり(機能)、説教という行動が繰り返される
  • 同じ現象でもどこを行動として捉えるかで、見方が変わる。
  • 学習した行動として同じことが繰り返される。本人の飲酒や家族のイネイブリングのメリットがある(機能)が飲酒という行動繰り返させているということを理解する。

強化と消去

 

  • 「お酒を飲まない行動」が増えるかかわり=正の強化(快が増加する【報酬】ことで行動が増える)。
  • お酒を飲む行動が増えず、徐々に減っていく。=消去(メリット【報酬】がないことにより、徐々に行動が減っていく)
  • この正の強化と消去が起こる関わりを考えて、計画し実行することが基本。
  • まずは消去から・・・お酒を飲んでいる人に説教などをしない、説教は注目を与える(報酬)ことになり、逆にお酒を飲む行動を強化してしまう。説教をしないことで、注目(報酬)を与えない。結果として、飲酒という行動は増えない。上手くいくと飲酒が減る。
  • *ちなみに、「負の強化」とは、不快が減少することにより行動が増えること。
  • *「正の罰」とは、不快の増加により行動が減ること。「負の罰」とは快の減少により行動が減ること。

正の強化

 

  • お酒を飲まない夜に「今のあなたと一緒にいられることが幸せ」と言う。お酒を飲まないという行動に褒めるという報酬を与えているので、お酒を飲まない行動が増える(正の強化)可能性が出てくる。
  • とにかく行動に注目する。様々な価値観、「飲んだくれは最低だ」、「私のこと、子供のことを少しは考えるべき」といったものはとりあえず脇に置いておく。自然と出てくるものなので否定はせずに置いておく。(マインドフルネスの練習は有効かも!)
  • これは労力が必要。どこまでやって、相手との関係や生活を改善したいのか、そこは家族自身の気持ち次第。
  • 家族の本当の気持ちを尊重することが大切。そのうえで、やるとなったらとことんやる。徹底的に寄り添い、付き合う姿勢がなければいけない。

暴力対応

 

  • まず、危険な暴力が起きているのなら、避難することを第一に考える。
  • 荷物をまとめる。
  • 避難先を確保する(親戚や友人にあらかじめ了解を取っておく)。
  • 行政に相談しておく(役所には女性相談員がいます。)
  • 暴力が起きた時には警察へ通報し助けを求めることを躊躇しない。
  • 以上のことを優先したうえで、暴力が起きる引き金になっている状況を機能分析して、暴力が生じない関わりを計画していく。

基本は一緒

 

  • 怒鳴る、物を投げるなどの行為があった時の機能分析をする。
  • (本人)お酒を飲み始めた→(家族)「もうお酒はいい加減にして」→(本人)「少しぐらい良いだろう」→(家族)「1杯だけと約束したじゃない。それはもう3杯目よ」→(本人)「うるせーっていってんだろ!」と怒鳴り、物を壁に投げつける。
  • どうすればよかったか
  • 家族のお酒をやめるように説得している行動が続いている(注目=報酬)。お酒を飲み始めた時点で「私はお酒をこれ以上飲んでほしくないの」と一言伝え、その場を去る(消去)。この行動であれば、暴力に結びつく報酬を減らすことが出来るかもしれない。

コミュニケーション

 

  • 「CRAFT依存症家族のための対応ハンドブック」ではPIUSコミュニケーションを紹介してます。
  • P(positive)…肯定的に。例「あなたのせいでいつも夜が台無しになる」(否定的)→「お酒を飲んでいないあなたと一緒にいるが大好きです」(肯定的)
  • I(Iメッセージ)…「お酒を飲んでいるあなたはいつか事故をおこしてしまう」(あなたが主語)→「あなたがお酒を飲むと私は心配です」(私が主語)
  • U(Understanding)…理解を示す。例「お酒を飲まなければいけない程大変な状況なんだね、でも私は・・・」
  • S(Share)…責任の共有。家族は依存症問題の原因ではないが、密にかかわっている。依存症者と一緒に問題に対応する、といった責任の一端を担う態度は必要。

3つの聴く技術

 

  • 「依存症の人を治療に向かわせるCRAFTの本」は3つの聴く技術を紹介している。
  • ①「そうなんだね」と返す。(受け止める)
  • ②相手に尋ねる「どうしてそう思うの?」
  • ③よく聞く…否定や批判をせずに最後まで素直によく聞く
  • POINT!
  • ☆はじめに尋ねてしまうと失敗する。まず、相手がそう思っていることを受け止める。それは許可や同意ではないし、評価したり、判断したり自分の意見を言うことではない。

セルフケア

 

  • 依存症問題の中にいる家族の負担は大きいです。依存症問題が解決する前に上手にセルフケアを行い、家族が自分自身を支える必要があります。
  • 自分が好きなこと、ご褒美になることをやる。
  • 時間とお金がかからないこと(散歩、野花をみる、瞑想する)
  • 時間はかかるけど低額なもの(近くの公園にハイキング、瞑想会に参加、自分の好きなメニューで食事を作る)
  • 時間とお金をかける(花屋に行き花束を買い、家に飾る、2泊三日の瞑想リトリートに参加。スポーツジムに通う。エステに行く。欲しかったものを買う)
  • 自分をほめる言葉を自分にかける(よく頑張っている、今日はこれで十分、ここまでできた自分はすごい)
  • 以上のようなことを、あらかじめ多く考えだし分類し、毎日できること、ここぞという時に行うこと、と計画を立てて家族自身が自分を支えられるようにしていきます。

頼れる人を作る

 

  • 悩みを聞いてくれる人
  • 一緒に気晴らしをしてくれる人
  • 暴力の危険の時にかくまってくれる人
  • 自分の話を共感して聞いてくれる人
  • 上記のように頼れる人あらかじめ探しておき、必要に応じで助けを求める。
  • 仲の良い友人や親せきはもちろん、同じ問題を抱えた家族同士初めて分かり合うことが出来るかもしれません。家族会や家族のための自助グループに参加するのもいでしょう。

治療につなげる

 

  • 機能分析を繰り返し行い、PIUSコミュニケーションや、3つの聴く技術を用いて依存症者との関わりを変化させると、依存症者の依存行動が変化してきます。
  • 依存行動が少なくなったり、量が減ったり、依存行動をしない期間が長くなったりします。
  • その時に、ここが一番のタイミングだと思った時期に治療につなげるような関わりを考えていく。

事前準備

 

  • 治療につなげて依存対象を失うことは、今まで依存対象によって得てきた利益を手放すことになります。
  • 例えば嫌なことを忘れられる。それによって何とか生きていける。気分が良くなる。緊張がほぐれる。依存対象を通じた友人や社交が持てる等。
  • 治療につながり依存対象を手放すことを決意した依存症者に対しては、その利益と同等、もしくはそれ以上のメリットを一緒に考えてあげる必要がある。
  • その人の依存によるメリットは何だろう、それに代わるものや関係、関わりとはどのようなものか具体的に出していく。

事前準備②

 

  • 地域の依存症医療施設や支援施設を探しておく。どこにあるのか、アクセスはどうなっているか、費用はどれくらいかかるのか、家族はどのようにかかわるのか、具体的にどのような治療が行われるのか、インターネット上の情報と実際に訪問し話を聞いておく。
  • また、地域で本人を支えてくれる自助るグループ(アノニマスグループなど)や家族を支えてくれる自助グループも探しておく。
  • 依存症者を治療につなげるためだが、まず、家族が助かりたい、楽になりたいという動機で治療施設や自助グループにつながってみる。
  • このような情報は、都道府県や政令指定都市の「精神保健福祉センター」(自治体によっては「心の健康相談センター」という名称)の依存症窓口に集まっていますし、担当の相談員が相談に乗ってくれます。

治療を進めるタイミング

 

  • 事前準備が整ったところで、本人に治療を進めるタイミングを考える。
  • ケースバイケースだが、依存行動をしていない時間が長い時期が良いのか、依存行動をした後に後悔している時が良いのか検討します。
  • この時も本人が治療につながるべきと伝えるのではななく、家族自身が「もっと良い関係になりたい」、「もっと本人と楽しいことをしたい」、「そのために治療に行ってみるのはどうだろうか」と提案する。その時、あくまで本人に合わせ、無理強いはしないことが大切。

治療を進めるタイミング②

 

  • まず、家族自身が依存症に対応できる医療機関や相談機関につながり、自分の問題の整理をはじめる。
  • 治療につなげるタイミングが訪れたら、自分が医療機関や相談機関に行っていること。自分がもっと良くなりたいから、本人にも来てもらい、医療者や支援者に会ってもらいたいことを伝える。
  • その時には事前に医療者や支援者と綿密な打つ合わせをしていたほうが良い。
  • 本人が治療機関に行く気になったら、すぐに予約を取って一緒にいくこと「CRAFT依存症家族のための対応ハンドブック」では24時間、もしくは42時間以内につなげることが有効だとしています。

最後の手段

 

  • 今まで、見てきたことを実行しても、何も変わらない、暴力がひどくなる、そのような事態になれば、最後の手段として、治療につながってくれなければ「関係を切る」ことを伝えます。
  • その時に重要なことは、言ったことは本当に実行するということ。実行しないとただの脅しになってしまい、それはイネイブリングになってしまいます。
  • また、治療をつなげるプロセスで終始重要なことは家族が安全であること。

治療につながったその時は

 

  • 本人が治療につながった時は、引き続き、機能分析と良いコミュニケーションを続ける。医療機関、支援機関にお任せという訳にはいかない。
  • 本人は、今まで自分を支えていた依存対象を手放すことになる。すでに述べた依存対象のメリットを上回るメリットを本人との関係の中で見つけることを模索しなければならない。
  • その時の家族の負担は大きい。セルフケアを忘れずに行うことが大切。
  • その積み重ねの中で、本人と家族が一緒にいることこそが、一番のメリットである、と皆が思える関係になれることが、何よりも望ましいことではないかと思われる。

平安の祈り(ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉)

 

  • 神様わたしにお与えください
  • 自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
  • 自分に変えられるものは変えるいく勇気を
  • そして、ふたつのものをを見分ける賢さを

参考文献

 

  • 「CRAFT:依存症者家族のための対応ハンドブック」 ロバート・メイヤーズ, ブレンダ・ウォルフ著 渋谷繭子訳 金剛出版2013.7
  • 「CRAFT 依存症患者への治療動機づけ-家族と治療者のためのプログラムとマニュアル」ジェーン・エレン・スミス(著),ロバート・J・メイヤーズ(著),境泉洋(監訳),原井宏明(監訳),杉山雅彦(監訳)
  • 「依存症の人を治療に向かわせるCRAFTの本: 家族としての“あり方”“接し方”(心のお医者さんに聞いてみよう)」吉田精次(監修)
  • 「実践家のための認知行動療法テクニックガイド: 行動変容と認知変容のためのキーポイント」鈴木伸一(著),神村栄一(著),坂野雄二(監修)

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