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心理カウンセリング/トラウマ治療(神奈川県横浜市)

IAP横浜相談室

【主な実施場所】(関内駅周辺の施設に変更になる場合があります)
〒231-0048 神奈川県横浜市中区蓬莱町2丁目4-7 澤田聖徳ビル 

予約制
関内駅・伊勢佐木長者町駅より徒歩3分

依存症の心理

依存症の心理
~なぜやめられないのか~

IAP横浜相談室伊藤享司

①なぜ、アルコールなどのアディクション(依存行動がやめられないのか

  • 斎藤学著「嗜癖行動と家族 」( 1984 年・有斐閣選書)の内容に従って
  • 不安
  • 怒り
  • 抑うつ
  • 傷ついた自己愛
  • 以上の依存症の心理 を見ていきながら、依存症者の本当の姿を検討していく。

②不安~その1~

  • 恐怖とは目の前に自分にとっての脅威が存在し 「戦うか・逃げるか」反応 が起き、筋肉にエネルギーが貯められる。
  • 不安は恐怖が長引いた状態である。そのため、目の前に明らかな脅威があるわけではないが、何か自分が脅かされていると感じている。筋肉のエネルギーはそのままなので 発散されることなく 不快な感覚が続いている。
  • アルコールなどの物質やアディクションはその不安を 一時的に忘れさせてくれ、気分を良くしてくれる 作用がある。
  • 物質であっても行為や関係であっても最終的にドーパミンの作用を高め 快感を得られる報酬系が働いている。

②不安~その2~

  • 不安と言う不快な感覚を取り払う ために依存対象に執着する。
  • 不安の正体と向き合い、その対応方法を考え実施出来れば健康。
  • 不安と向き合わず、抑圧しアディクションで不安を軽減すると不安の根本は解消されない。
  • 不安が増大されてアディクションが繰り返される。
  • アルコール摂取などは中毒により、大量摂取が続くと最終的には死が待っている 。そのことから、依存症は 慢性的な自殺と言われている。
  • それでもやめないのは抑圧した不安が潜んでいるから。

 

③怒り~その1~

  • 自分の要求を伝える 一つの方法である。 
  • 乳児にとっては生命の危機から逃れるために不快を快に変える(空腹を伝え、おっぱいを得る。排泄物の汚れをとってもらう)唯一の方法。
  • 大人は我慢することを徹底的に要求される。これが教育の目的の一つである(社会の構成員として、機能するため)。
  • 依存症者の怒りは「怒っていない」と言いながら、実際のアディクションで周囲を困らせている。これは、 抑圧した怒りを無意識下の行動で表現 している。

③怒り~その2~

 

  • 大事な人に怒りをぶつけて見捨てられるのが怖い(見捨てられ不安 )から怒りを抑圧する。
  • 素面のときは怒りを抑圧。アディクションで表現。
  • 生存のために怒りが必要であると考えると、生きるためにアディクションが必要 であると言えるかもしれない
  • 依存症者は大切な人に対して素面の時に「ありがとう」、酔っているときに「お前のせいだ」という相反する感情( 両価的感情・アンビバレンス )を持っている。感情を分裂させている。
  • 依存症者が2 重人格 と言われるのは素面の時の 怒りを否認 (なかったことにすること)しているから。

④抑うつ

 

  • うつ状態とは、無気力で寂しい感覚に襲われる。頭痛や頭重、肩こり便秘と言う身体症状年も現れる。
  • そう状態ははしゃいで、気分が爽快になる。金遣いが荒くなり、大きなことを言うなどの行動が見られ、周囲の人たちが馬鹿に見えたりする。
  • そうとうつを繰り返すのが躁うつ病。
  • 頑張り屋や几帳面な人、更年期に入った人がうつ状態になりやすい。
  • 飲酒すると動けるようになる。酔った勢いではしゃぐ。⇒躁的防衛
  • 人生の中で抑うつや不安をかかるのはしんどい。アディクションでうつや不安を取り除き、怒り表現を行っている。
  • ⇒生き残るためのアディクション

⑤嘘~その1~

 

脳に問題のある嘘

  • アルコールの飲みすぎで血中アルコール濃度が一定以上に上がると、記憶中枢の機能が低下して、酔いがさめた時に「覚えていない」となる。これをアルコール性 ブラックアウト という。
  • 飲み会などで1 次会から 2 次会に移るときに店を変える。その移動しているときに血中濃度がさがり、その時の「記憶はある」となる。記憶がある場面が点々としていることから「 島状記憶 」と呼ばれることがある。
  • アルコールの害(中毒)により記憶中枢の機能が壊れ、認知症のようになり、記憶の欠損を作話するようになる。これを コルサコフ症候群 という。

⑤嘘~その2~

 

高望み(誇大傾向)のうそ:心の防衛機制

  • アディクションをやめたとき、依存欲求とは反対の事をできると思う(防衛機制の 反動形成 )ようになる。
  • 「自分は一人で何でもできるんだ」「お酒を辞めることなんて簡単だ」と 誇大傾向 のあることを言う。
  • 到底できないことを自慢げに話すようになる。周囲はまたうそが始まったと思う。
  • 自分の弱いところを見せようとしない態度をもともとの自分の性格だとみせることを「 性格の鎧 」と言い、結果として 自分を
  • うそで塗り固めた存在 になっていく。

⑤嘘~その3~

 

  • 誇大傾向のある人は人から軽蔑されることが耐えられない 。
  • 嘘で自分を着飾る。
  • そのうち見抜かれてしまう。
  • アディクションによって責任を果たせなくなり、無責任で能無しの怠け者の自分をさらけ出すことになる。
  • アディクションによって自分を処罰 している。(アルコールの飲んだくれ。摂食障害の過食によって、自分は食物が通過するパイプでしかない存在だと貶める。)
  • 誇大傾向の人には 健全な自己愛 が必要。裸の自分を愛し許すこと。

⑤嘘~その4~

 

否認による嘘

  • 相反する気持ちがあることが認められない。
  • 「もう飲まない」も本音、「やっぱり飲みたい」も本音。
  • 「もう飲まない」が否認されて飲むことを正当化。
  • 治療者を神のように崇めたっと思ったら、すべてを否定する(神聖化とこき下ろし )。
  • 否定のみが表現され、治療者への感謝の気持ちは否認される
  • 依存症者が嘘つきと言われてしまう。

⑤嘘~その5~

 

自我分裂による嘘

  • 酔っている人格と素面の人格は分裂されている。
  • そこには否認の規制 が働いている。
  • 人格全体に及ぶので重大な状態。飲んで酔っ払ったことをなかったことにしてしまう。本人は覚えていない⇒うそつき
  • エスカレートすると遁走 という症状を生じる。
  • 遁走とはいつもの生活圏から一時期離れて過ごし、戻って来た時に離れていた時のことをすべて忘れるという状態。
  • これも嘘つきと思われるが、脳の障害との鑑別も難しい 。

⑥傷ついた自己愛~その1~

 

  • 依存症になるかどうかは生まれつきの気質と環境によって生じるかどうか決まる 。
  • 基本は親子関係
  • 拒否や過保護・過干渉、早すぎる役割分担(親子逆転、兄弟の親代わり)は不安を生み依存症になりやすい性格の基盤になる。
  • 自己愛は本来必要で健全なもの。
  • 自分を愛することで努力や忍耐が出来るようになり、他人を大切にすることが出来るようになる。

⑥傷ついた自己愛~その2~

 

  • 大人のしつけの中で子どもはそこに思いやりがあるがどうか、嗅ぎ分けている。
  • 思いやりがない扱いをされるとと自分を愛することが出来なく傷ついた自己愛 が生じる。
  • 誉めるばかりだと社会性が育たなく、社会(学校)で上手くいかない自分を恨む。
  • 拒絶的な親からは無視されたり、怒られてばかりで「自分はダメで劣った存在」だと自分を憎み、許せなくなる。
  • 家庭の緊張はすべて自分のせい であり、親から拒否されている証拠だと思うようになる。

⑥傷ついた自己愛~その3~

 

  • 子どもは、「では、どうすれば許されるのか 」と考える。
  • 自分の感情や主張を押し殺し、他人の顔色ばかり窺うようになる。
  • 理想的な自己を維持しようとする( 自己愛の肥大)
  • 社会の中では希薄な情緒的交流しか生まず、冷たくて身勝手な人と思われる。
  • 他人を道具として使い捨てるようになる。
  • 誇大自己を満たすために平気でうそをつくなど背徳的なことも実行してしまう
    自己愛性パーソナリティ

⑥傷ついた自己愛~その4~

 

自己愛と万能感

  • 乳児は自分が生きていることを必然の事と捉え安心感に包まれている。
  • この安心感と自己肯定感が「自己愛 」。
  • 安心感が得られないと「見捨てられ不安 」に繋がってしまう。
  • 外界は自分のために存在し、自分に奉仕するという思い込みが「能感 」
  • こじれるとスーパーマン幻想 のように依存症者の 誇大傾向 に繋がってしまう。
  • フロイトの心理性発達理論のなかで論じられているが割愛する。

⑦終わりに

 

  • 参考文献の「嗜癖行動と家族」は1984 年出版の古いものである。
  • 1995年ごろにアダルトチルドレンや共依存 と言う概念が広まる 10 年前のこと。
  • 自己治療仮説 」がエドワード・ J ・カンツィアンによって論文として発表されたのが 1985 年 である。
  • 両者の内容を概ねカバーしていると思う。
  • 現在、依存症治療の心理教育、動機づけ面接、ハームリダクション(アプローチ)、「底付きを待つのではなく底上げ」、「直面化ではなく支持的に受容と共感」、「断酒のみでなく節酒も可能」 など、新しい理解や方法論が取り入れられている。
  • しかし、今回紹介した依存症の病理的理解なしでは、正しい治療や支援は出来ないのではないかと思われた。
  • 依存症の理解と治療においても「温故知新 」は当てはまるのだろう。

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